一番初めにはえる永久歯は?

興味ある文献に出会いました。日本歯科大の中原 泉、関本恒夫両先生の「萌出のグローバル現象」と題する論文です。以下要約しました。
1960年代まで日本人では男女とも下顎第一大臼歯(下顎6番)が、永久歯として最初に萌出することが報告されてきた。ところが1970年代に入り下顎第一中切歯(下顎1番)が最初に萌出する永久歯になりつつあると報告され、ついに1988年日本小児歯科学会は全国的な調査を実施し、最初に萌出する永久歯は男女とも下顎第一中切歯であると報告した。つまり萌出順位が6番から1番へ逆転してしまったことになる。そこで、現代人の下顎6番と1番の萌出の分布状況をグローバルに調査した。
この両歯の逆転現象は、日本だけでなくイギリス、フィンランド、チェコスロバキアなどでも報告された。ところがドイツ、フランス、韓国などではこの逆で下顎1番から下顎6番に萌出順位が変わってきたと報告されている。結局、人類の一番初めにはえる永久歯は、下顎6番と下顎1番の2つのタイプがあること、しかもその両型とも一部に萌出順位が逆転する、という生体変化を生じていることがわかってきた。

結論

(1)人類の第1位萌出永久歯は2タイプあり、下顎6番がMajority(8割強)で、下顎1番はMinority(2割弱)である。

(2)第1位萌出永久歯としての下顎6番と下顎1番はともに、その一部に萌出順位が男女とも最近50年以内に逆転する( 2割強)、という生体変化を生じた。

(3)2タイプおよび両型の逆転には、人種的(民族的)、地域的、環境的な差異はみられず、その分布には法則性は見出せない。
                                              以上です

宇美町の平成16年度新入学児童健康診断がありましたので、さっそく調べてみました。結果は以下のようになりました。
第1位萌出永久歯 男児 女児
下顎6番 2名 3名
下顎1番 6名 8名
やはり下顎1番からはえてくる子の方が3倍多いことがわかりました。健診時にすでに6番、1番共にはえている子(圧倒的に多い)はどちらが先かわかりませんのでカウントしていません。また永久歯が1本も生えていない子も多くいました。この辺は個人差が大きいです。印象深かったのは、左右下顎1番2番、左右上顎1番つまり上下前歯が6本はえているのに第1大臼歯がまだ生えていない子が1名いました。ひょっとしたら、このようなはえかたが逆転後に進む方向かもしれません。いずれにせよたいへん不思議な現象だと思いました。これからも注意深く観察していこうと思います。
最近の話題