ビスフェノールA

環境ホルモンという言葉がマスコミに登場してかなりなります。環境ホルモンとは、極微量で生体内でホルモン様の働きをする化学物質のことです。その作用は、女性ホルモンであるエストロゲンと同様にはたらき、生態系でのメス化、精子の減少、発ガン性などが報告されています。この環境ホルモンが歯科医療で使うコンポジットレジンやシーラント、ポリカーボネート床義歯などから溶け出してくると報じたテレビや新聞、週刊誌がありました。この溶け出してくると騒がれる物質がビスフェノールAと呼ばれます。この化学物質の歴史はけっこう古く19世紀の終わりにロシアのDianinにより始めて合成されました。現在世界生産量の20%以上を日本のメーカーが生産し、ポリカーボネート樹脂やエポキシ樹脂の原材料となります。コンポジットレジンはBis−GMAという化学物質を使用しますが、これを合成するのにもビスフェノールAが使われるのです。

安全性

さて本当にコンポジットレジンやシーラントからビスフェノールAが唾液中に溶け出してくるのでしょうか。実は溶け出すという研究発表もあれば全く溶け出さないという研究発表もあります。この相反する結果は、分析技術や手法、分析機器の違いによるとも考えられます。溶け出すとした発表でもそれは極微量であり、仮にそれを飲み込んでも数日中に排泄され、体内蓄積性はないとする試験もおこなわれています。またビスフェノールAのエストロゲン様活性自体がエストロゲンの約1万分の1ともいわれています。アメリカ歯科医師会は事実上の安全宣言を出していますし、日本歯科医師会もそれを支持しています。厚生労働省はビスフェノールAに関しての中間報告を出し「未解明な点が多いため、今後引き続き検討することが重要であるが、現時点で直ちに使用禁止等の措置を講じる必要はないものと考えられる」としています。欧米も日本と同じ考えで、各国政府もそれを変更しようとする動きはありません。

コンポジットレジンの利点

ここで改めてコンポジットレジンの有益性、有用性をみてみますと

@歯の切削を必要最小限におさえられる(歯牙に対するダメージが少ない)
A歯とほぼ同じ色にできるので審美性にすぐれる(見た目がいい)
B歯と強固に接着できる(はずれにくい)
Cアマルガムを使用しなくてすむようになった(水銀汚染の問題を解決してきた)などがあげられます。

当医院の考え

現在までのところ、以下のように受け止めています。

@歯を削らなくて済めば、歯に詰める材料の心配はいりません。まずは予防が一番です。定期健診が最も大切です。
A虫歯の感受性が低い小児に、シーラントをする必要はありません。プラークコントロールで充分に対応できると思います
B矯正用ポリカーボネートブラケットは、コンポジットレジンやシーラントに比べ100倍〜1000倍の溶出量あり注意が必要です。
C同様にポリカーボネート床義歯は、あえて使う必要性はありません。
D過度の審美性(見た目の美しさ)を求めるのはいかがなものでしょうか。


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